神田四季報

個別の銘柄・株価分析。バリュー投資の教えのまとめ。

テンプルトン卿の流儀を読み終えて

テンプルトン卿の流儀

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著作:ローレン・C・テンプルトン, スコット・フィリップス
翻訳:鈴木敏昭
出版社: パンローリング 2,940円

本を読んだ感想

割安株、中・長期の思考の投資家に超薦めます

具体的な個別銘柄には、そんなにフォーカスをあてているわけではありませんが、割安株を探すための手段・考え方が惜しまずに書かれていて、今まで読んだ本の中では、上位に入るほど、なるほど思う箇所が多く、参考になるアイディア、考え方が多かったです。

ジョン・テンプルトン氏について

テネシー州出身。海外への投資の先駆者として知られ、1950年代にいくつものファンドを立ち上げて成功を収めた。注目される前の日本株への投資も積極的に行った。
http://news.shikoku-np.co.jp/national/okuyami/200807/20080709000155.htm

本の概要:世界に目を向けたバリュー投資

マネー誌が20世紀最高の銘柄選択者と称えた伝説的なバリュー投資のテンプルトン卿のアプローチ方法・銘柄選択術を紹介。世界に目を向けて投資をする点、ポートフォリオの保護のために分散投資

まとめると、悲観の極みに商機

有名な言葉は、「強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観とともに成熟し、陶酔のなかで消えていく。」

心に残った個所

バーゲンハンターは、近所の人や理髪店、あるいはウォール街最高のアナリストから聞いた巧みな物語をもとにしてオールラウンドの投資戦略をとってはならない。想定される企業価値を株価が充分下回っているかどうかに関する自分自身の評価を基礎とするのでなければならない。それだけが将来の誘導灯となる。

周りに振り回されないように自分で評価をすることが大事。バリュー・グロース系では必ず書かれている内容。

★また懐疑心が羅針盤となる。企業に関する物語だけを頼りに株を買うのは、神話のセイレーンの歌に魅せられて岩礁地帯に近づくようなものだ。そこには、物語を信じ込んだ投資家の死体が漂っている。

何となくで買われる。バイオ・iPS、不動産ぼろ株でしょうか。

★株を買う前にその企業について、つまり事業内容や売り上げの促進要因、利益維持に当たって直面する下方圧力の種類、競争状況などについて完璧に理解しておくことがどうしても欠かせない。そのような情報を得ることで、その銘柄についてしっかりした意思決定を下すための最上の心理的基礎が築かれる。
~中略
前もって企業情報の蓄積と分析を行っておけば、企業が土砂降りに遭って株価が下落した時に断固としてその株を買うことができる。

冒頭のチェックしたところと同様。売り上げの促進要因、利益維持に当たって直面する下方圧力の種類、競争状況あたりは、きっちりやることが重要。

★5年と言う中長期的予想を用いることは容易な作業ではないが、それによって、企業の中心的な問題へと自分の思考や疑問や検討を集中させるという効果的な視点が必然的に身に付く。

別の本にも書かれていましたが、割安株を見つけると早く買いたいと思ってしまいますが、冷静に判断するために改めて長期的な視点で「この投資は正しいか?何か問題はないのか?」を考えるために長期的な視点が重要だと思います。

★為替リスクの高い国を避けたいと思ったら、まず第一に、輸入よりも輸出が多い国で事業の25%以上を行う企業に焦点を絞るのが良い。
~中略
第二の判断材料として、その国の政府債務は年間GNPの25%を超えてはならない。

為替リスク軽減。新興国への投資の参考。

★バーゲン株候補を探し当てたときはそのミスプライスの原因を発見するために正直に努力することだ。ミスプライスの原因が短期的、一時的問題にあったとすれば株価に反映されている割安性を引き受けるだけの価値がある。

スプライスは、短期的な問題なのか?長期的な問題なのか?長期の場合は、企業の成長力に疑問が生じる場合もある。

イトーヨーカドーは、将来の収益に対して支払う価格が同種の太銘柄に比べて非常に割安とみられることから有望なバーゲン銘柄と思われた。この結論に到達する手順の中には、比較購入と呼ばれる大半のバーゲンハンターにおなじみの方法が含まれていた。
~中略
先進国の著名な大手スーパーであるセーフウェーとイトーヨーカドーとを比較することで、イトーヨーカドーの買い付けによってほかの市場よりもはるかに有利な取引が実現できると推定したのだった。

計算式
PEG=PER÷予想成長率=低い数値の方がバーゲン銘柄

先進国と新興国の比較。多国間で比較をするのはJTの分析で行いました。これからは、どの市場でも外国からの投資は増えるでしょうから、ますます多国間分析は重要になると思います。

相対価値に基づく判断を行うことによって、市場の投資可能な銘柄と比較しながら自分の投資対象の魅力度を絶えず評価できるからだ。

国をまたいだ相対評価で、自国の市場の過熱感・割安感も判断できると思います。

★たくさんの価値尺度を使う第2の利点は自分の発見を異なる方法で確認できるということだ。ある株が5つの尺度に基づいてバーゲンだとわかったら革新はそれだけ高まる。

反省。もっと自分の分析方法を増やしたいと思います。

大恐慌の暴落の底に遭ったダウ平均構成銘柄がそれほど良いバーゲンで無かった理由は、企業の保有資産の取替価値が帳簿上の価値を20%下回っていたことにある。言い換えれば、それらの企業の各経営者が所有資産を取り換えたいと思ったら、物価下落のせいで20%安いことでそれができたのだ。

PBRが割安だ!と言うことで飛びつくと実は危険。

インフレに伴う物価調整分を差し引いて検討することで、PBRが本当に割高か?割安なのか?判断ができる。この努力が本当に割安株を見つけだすことができる。

★ジョンおじさんは企業買収の件数が増えつつある状況に気付いたとき、自分が目にした他の兆候と並んで、株価が企業の本質的価値に比べて安すぎることを示す市場のシグナルとしてその事実を受け止めたのだった、

企業価値=株主資本の市場価値(時価総額)+債務総額-現金

実最適な例としてある会社の企業価値をEBITDAで割った倍率が3倍だったとして、同じ業種の競合企業が別の企業をEBITDAの6倍で買収したとすれば、その会社の株価はバーゲンだと結論付けることができるだろう。

M&Aの事例は参考。イオンのダイエー買収が最近あったので、他のスーパーを分析すると面白いかもしれません。

★その時期のハイテク株の買い手や売り手は保有株の株価の日々の動きだけを見て売買の決定を下していたからだった。つまりデイトレーダーたちは株価が上昇すればその動きから利益を上げるために買いに出る、と言う具合だった。

~中略
だが一旦株価が下落に転じると、ハイテク株の保有者は過去に株価が上がったということ以外に保有を続ける根拠を持っていなかった。だから下落が始まると、その株に執着する理由はほとんどなかった。

最近の日本のIPOの傾向。

ファルテック・サンヨーホームズとか上がるから上がったけど、理由が無いから下がったら下がりっぱなし。

★魅力的なバーゲンでありながら大量投資の対象としては小規模すぎると思われる外国の株式市場と何度も出会ってきた。そうした状況で流動性の欠如を補うために用いた方法は、その国で営業している大手銀行の株を買うことだった。

ベトナムのように特に市場規模が小さく外国人の投資家比率が厳しい市場で、検討したいと思います。